かぶれ・湿疹とは

かぶれは接触性皮膚炎とも呼ばれ、特定の物質や刺激に皮膚が反応することで発生する疾患です。皮膚のかゆみや赤み、腫れやヒリヒリ感など、さまざまな症状を伴います。患部を掻いてしまうと二次感染を起こし、水ぶくれになってしまう場合があるため注意が必要です。
一方、湿疹とは外的な刺激だけでなく、内的な刺激も含む原因によって起こる皮膚炎の総称を指します。つまり、湿疹にはさまざまな種類があり、かぶれは湿疹の一種というわけです。かぶれは、基本的に原因物質が接触した部分に発生しますが、湿疹は種類によって原因が異なります。そのため、湿疹が発生した場合は原因を特定し、湿疹の種類に合わせた治療を行う必要があるのです。
なお、かぶれと似た皮膚疾患のひとつに蕁麻疹があります。蕁麻疹は特定の食品を食べた場合やアレルギー物質が体内に入ることで発生し、かゆみや赤みを伴います。基本的に、かぶれは外的な要因で発生するのに対し、蕁麻疹は内的な要因で発生したトラブルが皮膚炎としてあらわれる点が大きな違いです。また、蕁麻疹は基本的に数十分~1日程度で症状が跡形もなく消えるという特徴があります。
似たような症状に見えたとしても、かぶれや湿疹にはさまざまな種類があるため、特徴を把握して適切に対処することが重要といえるでしょう。
かぶれ・湿疹の症状・特徴
皮膚に上記の症状が出ている場合は、かぶれ・湿疹の可能性があります。軽症であれば軽い痛みや赤み程度で済む場合もありますが、悪化した場合は火傷のような水ぶくれや強い痛みなどを伴うこともあるでしょう。かぶれ・湿疹にはさまざまな種類があり、症状の重さや経過はさまざまです。そのため、ここでは湿疹全般に関する症状の経過についてお伝えします。
かぶれ・湿疹の経過

上記の図は湿疹の進行過程を表しており、湿疹三角と呼ばれています。湿疹は、まず皮膚に炎症が起こることで毛細血管が膨らみ、赤みが発生します。この段階ですぐに改善できれば、肌のターンオーバーによって古い皮膚が剥がれ落ち、症状は落ち着いていくでしょう。
しかし、症状が悪化した場合は赤いブツブツができたり、水ぶくれができてしまったりします。患部を掻いてしまった場合など、二次感染を引き起こすと化膿して大きな水ぶくれができてしまうこともあるため注意が必要です。
また、患部に刺激を与え続けると、色素沈着や皮膚が分厚くなる苔癬化(たいせんか)を引き起こす場合もあります。かぶれ・湿疹の悪化を防いで綺麗に治すためには、早い段階で適切な治療を行うことが大切です。
かぶれ・湿疹の原因
かぶれ・湿疹は、皮膚の炎症が発生した状態であり、さまざまな原因によって引き起こされます。それぞれの原因を理解することで、適切な対応をすることが可能です。ここでは、かぶれ・湿疹の主な原因についてお伝えします。
蚊やノミによる虫刺され
蚊やノミによる虫刺されは、強いかゆみや痛みを伴います。また、虫が皮膚を刺した際に注入する唾液や毒素に対して体がアレルギー反応を起こし、かぶれ・湿疹を引き起こす場合があるのです。
蚊に刺された場合は、比較的軽いかゆみで済むことが多いですが、ノミに噛まれた場合は皮膚に強い赤みや湿疹が広がることがあります。虫除けスプレーを使用したり、室内環境を清潔に保ったりすることで、虫に刺されるリスクを抑えましょう。
皮膚の乾燥
皮膚が乾燥することによって、角質層の水分が不足して皮膚が柔軟性を失い、ひび割れや皮剥けが起こってしまいます。この症状は乾皮症と呼ばれ、悪化すると「乾燥性皮膚炎」へと進行するおそれがあります。乾燥性皮膚炎になると、強いかゆみや赤み、水ぶくれなどの症状があらわれるため、単なる肌荒れと軽視しないよう注意してください。症状が悪化してきた場合は早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
かぶれ・湿疹を起こす物質との接触
かぶれ(接触性皮膚炎)は、肌に特定の物質が接触することで炎症が生じる皮膚疾患です。かぶれにはいくつか種類があり、代表的なものは以下のとおりとなっています。
アレルギー性皮膚炎
アレルゲン(特定のアレルギー物質)によって引き起こされます。
刺激性皮膚炎
化学物質などが皮膚を直接刺激することで発症します。
光接触性皮膚炎
特定の物質が皮膚に付着した状態で、光や紫外線を浴びることによって起こります。
かぶれの原因となる物質は、植物や果実、金属や化粧品など多岐にわたります。そのため、パッチテストを行うことでアレルゲンを特定し、適切な対策を行うことが重要です。
汗をかいたまま放置している
汗に含まれる塩分、乳酸、尿素などの老廃物が刺激となり、かぶれや湿疹の原因になることがあります。汗は細菌や真菌の温床になりやすいため、こまめに拭いて皮膚を清潔に保つことが大切です。汗をかいたまま放置せず、適切なスキンケアを行いましょう。
かぶれ・湿疹にはさまざまな種類があり、それぞれ原因や治療方法が異なります。初期段階で適切なケアをすることによって症状の悪化を防ぐことができるため、早めに皮膚科を受診しましょう。
かぶれ・湿疹の主な種類
ここでは、かぶれ・湿疹の主な種類についてお伝えします。かぶれ・湿疹の症状が出ている方は、どの種類に当てはまるか確認して早めに対策を行いましょう。
接触性皮膚炎(かぶれ)
接触性皮膚炎(かぶれ)は、皮膚に特定の物質が触れることで生じる炎症です。原因となる物質にはさまざまなものがあり、接触性皮膚炎(かぶれ)は大きく分けて3つに分類されます。
① アレルギー性接触皮膚炎
アレルゲンに対する免疫反応により生じる皮膚の炎症のことです。その物質に対してアレルギー反応がある人にだけあらわれる疾患となっています。個人差はありますが、アレルギーが成立するまでの期間は2週間~半年程度といわれており、アレルギーが成立するまではアレルギー性接触皮膚炎の症状は出ません。しかし、アレルギーが成立してしまうと、アレルゲンが皮膚に触れてから数時間~1日程度で発症する場合があります。
② 刺激性接触皮膚炎
刺激性接触皮膚炎は、原因物質によって皮膚に強い刺激があった場合に炎症が起こる疾患です。アレルギー反応によるものではないため、誰にでも起こる可能性があります。症状の経過には個人差があり、原因物質に触れた直後に発症する場合もあれば、原因物質が何度も皮膚に触れることで少しずつ症状が出る場合もあります。
③ 光接触皮膚炎
光接触皮膚炎は、皮膚になんらかの物質が付着している状態で、その部分に紫外線や光が当たることで発症する疾患です。かゆみや赤みにくわえて、火傷のような水ぶくれが生じる場合もあります。
皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏性湿疹は、皮膚の乾燥によって引き起こされる湿疹で、特に高齢者に多く見られます。皮脂が不足するとバリア機能が低下し、外部刺激に敏感になってしまうのです。そのため、こまめに保湿することが非常に重要で、しっかりとスキンケアを行うことで症状をやわらげることができます。秋から冬の乾燥する季節に発症しやすいため、皮膚の保湿や空間の加湿を行いましょう。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因や環境の要因によって発症する皮膚疾患です。顔・首・耳・ひじ・ひざ・脇の下などの部位に生じやすく、症状が左右対称に発生するという特徴があります。アトピー性皮膚炎の治療には抗炎症薬などを使用し、場合によっては内服薬も併用します。
貨幣状湿疹
貨幣状湿疹は、コインのような形状の湿疹があらわれる疾患です。皮膚の乾燥や虫刺されによってかゆみが発生し、患部を何度も掻くことで発生する場合があります。また、症状が悪化すると自家感作性皮膚炎に進行する場合があるため注意が必要です。
手湿疹
手湿疹は主婦湿疹とも呼ばれ、頻繁に水や洗剤を使う方に多く見られます。症状としては、手の赤み、ひび割れ、かゆみ、皮剥けなどがあります。保湿クリームを定期的に使用して乾燥を防ぎ、刺激物との接触を避けることが大切です。また、ゴム手袋などを使用することで手を保護するのも効果的といえるでしょう。
汗疱
汗疱(かんぽう)とは、手のひらや足の指に小さな水ぶくれが生じる疾患です。1~2mm程度の水ぶくれが多く見られますが、基本的には数か月程度で自然治癒します。ただし、年に数回は再発するおそれがあるため注意が必要です。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、皮脂の分泌が多い部位(頭皮、顔、生え際など)に湿疹があらわれる疾患です。脂漏性皮膚炎は、皮脂が過剰に生成され、皮脂が栄養となって増殖するマラセチア(真菌)が原因といわれています。マラセチアが増殖する原因はまだ解明されていませんが、体質の変化やホルモンバランスの乱れなどが関係しているとされています。皮膚を清潔に保ち、過剰なストレスや睡眠不足に陥らないよう、日々の生活習慣を見直すことが予防に効果的といえるでしょう。
かぶれ・湿疹ができやすい人の特徴
上記の項目などに該当する方は、かぶれ・湿疹ができやすい傾向にあります。皮膚が乾燥しやすい人は、バリア機能が低下しているため外部からの刺激に敏感で、かぶれ・湿疹が起こりやすいです。アレルギー体質の人は、かぶれの一種であるアレルギー性接触皮膚炎が発症する場合があります。
また、清掃業や飲食業など、日頃から水や洗剤に頻繁に触れる人は手湿疹になりやすいです。ストレスや生活習慣の乱れもかぶれ・湿疹の原因につながるため、適切な予防法を把握しておくことが重要といえるでしょう。
かぶれ・湿疹の予防・対処法
かぶれ・湿疹は、日頃から適切な予防法を意識することで発症のリスクを抑えることができます。また、かぶれ・湿疹が発症してしまった場合は、速やかに対処することで悪化を防ぐことが可能です。ここでは、かぶれ・湿疹を予防・対処する方法についてお伝えします。
かぶれ・湿疹の予防法
① 保湿や紫外線対策を徹底する
皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下することによってかぶれ・湿疹が起こりやすくなります。日頃から保湿や紫外線対策を徹底し、皮膚のバリア機能を保つことが大切です。保湿クリームや日焼け止めをこまめに塗り、皮膚へのダメージや乾燥を防ぎましょう。
② かぶれ・湿疹の原因になりそうな物質を避ける
かぶれ・湿疹を予防するには、原因になりそうな物質を避けて生活することが大切です。新しい製品を使用した際にかぶれ・湿疹が発生した場合は、パッチテストを行って肌に合わない成分を特定すれば再発防止につながります。
③ 清潔な肌をキープする
皮膚に付着した汚れや汗は、細菌や真菌の温床となってしまうため炎症の原因につながります。汗をかいたらこまめに拭き取り、清潔な状態を保ちましょう。ただし、過度に身体を洗うと必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥の原因になるため注意が必要です。
かぶれ・湿疹が出てしまった場合の対処法
① 患部は掻かずに冷やす
かぶれや湿疹が出た場合、患部を掻いてしまうと症状が悪化し、二次感染のリスクが高まります。かゆみが強い場合は、タオルで包んだ保冷剤で患部を冷やすことで、かゆみや炎症をやわらげることが可能です。
② 軽症の場合は市販薬でセルフケアも可能
軽い症状であれば、市販薬を使用して対処することができます。ただし、症状が改善しない場合は無理にセルフケアを続けず、早めに医師に相談してください。
③ 症状が悪化する前にクリニックに相談
かぶれ・湿疹の症状が長引く場合は、症状が悪化する前にクリニックに相談することが大切です。医師の診断に基づき、適切な治療を受けることで早期の改善が期待できます。また、アレルギーなどが疑われる場合は、パッチテストを受けることで原因を特定し、再発を防ぐことができるでしょう。
かぶれ・湿疹の診断・検査
かぶれや湿疹の診断は、問診や視診・触診にくわえて、パッチテストを行うことがあります。パッチテストは、アレルギーの原因と考えられる物質を皮膚に48時間貼付し、48時間後・72時間後・1週間後にアレルギー反応が出るかチェックする検査です。検査結果は、貼付する物質の量や濃度、接触時間などに左右されるため、皮膚科で受けることをおすすめします。また、光接触性皮膚炎が疑われる場合は、光パッチテストを行うこともあります。
かぶれ・湿疹の治療方法
湿疹の場合は、原因や症状に応じて治療を行います。一般的には、かゆみや炎症を抑えるためにステロイド外用薬を使用し、必要に応じて抗アレルギー剤や抗生物質なども使用します。
かぶれの場合は、まず原因となる物質を特定し、その物質との接触を避けることが治療の基本です。必要に応じて、外用薬や内服薬を処方することもあります。
かぶれ・湿疹は市販薬を使ってセルフケアすることも可能ですが、症状が長引いている場合は早めに医師の診察を受けることをおすすめします。正しい治療を行うことで、早期改善や予防をすることができるため、当院までお気軽にご相談ください。