アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは皮膚にかゆみのある皮疹ができる疾患で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

皮膚を外部刺激や乾燥から保護する機能を「バリア機能」と呼びますが、アトピー性皮膚炎はバリア機能が低下しているのが特徴です。バリア機能の低下によってアレルゲンなどの刺激が皮膚内部に入りやすくなり、免疫細胞と結びつくことで炎症を起こします。

また、アトピー性皮膚炎ではかゆみを感じやすく、かきむしることでさらにバリア機能が低下するといった悪循環に陥ってしまうのです。

アトピー性皮膚炎の症状・特徴

アトピー性皮膚炎の症状や特徴、重症度について見ていきましょう。

症状

アトピー性皮膚炎の症状や特徴、重症度
赤くなる
赤いブツブツができる
ジクジクと液体が出てくる
皮がボロボロ剥ける
硬くてゴワゴワする

アトピー性皮膚炎の皮疹にはさまざまなタイプがあります。赤くなったりブツブツができたりしますが、症状が長期間続くと皮膚が硬くゴワゴワになってしまうのです。

また、アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下している状態のため、少しの刺激でもかゆみを強く感じてしまい、かきむしることで皮疹を悪化させてしまいます。

重症度

アトピー性皮膚炎は、炎症の強さと皮疹ができている面積で重症度が分類されます。

  • 軽症

    軽い赤みや乾燥・面積は関係なし                 

  • 中等症

    強い炎症を伴う皮疹・体表面積の10%未満                 

  • 重症

    強い炎症を伴う皮疹・体表面積の10%以上30%未満                 

  • 最重症

    強い炎症を伴う皮疹・体表面積の30%以上                 

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎はなぜ起こるのでしょうか。その原因や悪化する理由についてお伝えします。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎はバリア機能が低下した状態のときに、外部からのさまざまな刺激やアレルゲンが皮膚内部に侵入することで起こります。また、ストレスなどの環境的な要因が重なることも原因として考えられています。

特に、下記のようなアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)を持つ方は、アトピー性皮膚炎になりやすいといわれています。

本人や家族がアレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・結膜炎・ぜんそくなど)を持っている
「IgE抗体(アレルギーに関わる免疫物質)」を作りやすい体質

アトピー性皮膚炎が悪化する理由

季節の変化(冬に悪化する、花粉の時期に悪化するなど)
生活環境の変化
体調不良
ストレス
汚れ
ペット

アトピー性皮膚炎はさまざまな要因によって悪化する可能性があります。上記のような要因が重なるとアトピー性皮膚炎の悪化に繋がるため、治療をする際にはこれらの要因も取り除くことが重要です。また、アトピー性皮膚炎が悪化する原因は人によって異なるため、これまでの生活環境や経過などを踏まえた上で判断されます。

食物アレルギーとの関係

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は関係なさそうに思えますが、実は深い関係があるのです。アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が低下していますが、そこから食物が入り込むことで食物アレルギーを発症してしまいます。

食物アレルギーを防ぐためにも皮膚のバリア機能を高めることが重要です。そのためにはしっかりとスキンケアを行い、湿疹ができている場合は早急に治療を受けるようにしましょう。

アトピー性皮膚炎の予防方法

身体をゴシゴシと洗わない
長時間の入浴はしない
入浴時や身体を洗う際はぬるま湯を使う
石鹸やボディソープはよく泡立てて使う
お肌に優しいシャンプーやボディソープを使う
入浴後はしっかりとスキンケアをする

アトピー性皮膚炎は洗いすぎを避けしっかりと保湿することが重要です。熱いお湯はお肌に必要な皮脂まで奪い乾燥を引き起こすため、熱すぎない温度のお湯で身体を洗い入浴しましょう。また、入浴後はすぐに保湿をするよう心がけてください。

アトピー性皮膚炎を発症しやすい部位

アトピー性皮膚炎を発症しやすい部位

アトピー性皮膚炎の皮疹は子どもと大人で発症しやすい部位が異なります。

乳児期には頭皮や顔にできやすく、次第に肘の内側や膝の裏にも皮疹が出るようになります。幼小児期には手足の関節や目の周りなどに皮疹ができやすく、思春期以降は上半身に起こりやすいといえます。

アトピー性皮膚炎の診断・検査

アトピー性皮膚炎の診断方法・検査方法についてお伝えします。

診断方法

世界的に使用されているUKWP(The U.K. Working Party)診断基準。

大基準(1)と3項目以上の小基準(2)を満たすものをアトピー性皮膚炎と診断する。

(1)

お子さんは皮膚がかゆい状態である。または、両親から子どもが皮膚を引っかいたり、こすったりしているという報告がある。

(2)

① お子さんはこれまでに肘の内側、膝の裏、足首の前、首のまわり(9歳以下は頬を含む)のどこかに皮膚のかゆい状態がでたことがある。

② お子さんは喘息や花粉症の既往がある。または、一等親以内に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の既往がある。

③ 過去12か月の間に全身の皮膚乾燥の既往がある。

④ 関節の内側の湿疹(3歳以下は頬・おでこ・四肢外側を含む)が確認できる。

⑤ 1歳以下で発症している(3歳以下のお子さんにはこの基準を使わない)。

引用:国立成育医療研究センター

検査方法

血液検査

アトピー性皮膚炎は血液検査によってTARC(炎症の程度がわかる数値)またはSCCA2(重症度を評価する指標)を測定することで、重症度をチェックすることができます。また、特異的IgE抗体検査によって、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因についても調べることが可能です。

アトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎の治し方について詳しく見ていきましょう。

治療の目標

治療の目標

アトピー性皮膚炎の治療では、良くなったり悪くなったりするかゆみや皮疹を「良い状態」で維持することを目標とします。具体的には下記の2つの目標を目指して治療を行っていきます。

① 症状がないまたは症状があっても日常生活に支障がなく薬物療法がほとんど必要ない状態

② 症状が軽いまたは症状が急に悪化することがない、悪化しても続かない状態

受診の目安

アトピー性皮膚炎は早めに治療を開始することが重要です。下記に当てはまる方は皮膚科を受診するようにしましょう。

強いかゆみと湿疹が長期間続く
皮膚が乾燥してカサカサしている
良くなったり悪くなったりを繰り返す
顔、耳、首、ひじ、ひざ、脇の下、太ももの付け根などに湿疹がある

薬物療法(外用薬)

アトピー性皮膚炎の治療では、主にステロイド薬・非ステロイド性抗炎症薬・免疫抑制薬(タクロリムス外用剤)などが使用されます。ステロイド薬は効き目に応じて5つのランクに分類されており、症状や部位などによって処方されるものが異なります。

基本的には1日数回の使用から、1日おき、3日おきなど使用量を少しずつ減らしていき、最終的には薬を使わず保湿剤のみ使用するよう進めていきます。

リアクティブ療法とプロアクティブ療法について

リアクティブ療法とプロアクティブ療法について

アトピー性皮膚炎の外用薬による治療には「リアクティブ療法」と「プロアクティブ療法」の2種類があります。リアクティブ療法は症状が出たときに薬を塗り、プロアクティブ療法では症状がなくても予防的に薬を塗ります。アトピー性皮膚炎は再発することが多いため、現在ではプロアクティブ療法が推奨されています。

注射(デュピクセント®︎)

アトピー性皮膚炎の治療方法に「デュピクセント®︎」という自己注射があります。デュピクセント®︎は「IL-4」と「IL-13」の2つの物質の働きを抑えることで、皮膚の炎症・かゆみ・バリア機能低下を改善させる効果が期待できます。

スキンケア

アトピー性皮膚炎の治療ではスキンケアも大変重要な役割を持ちます。

お肌に優しい石鹸を使う
シャワーや入浴は1日1回まで
入浴時は38〜40度のぬるめのお湯につかる
入浴後はすぐに保湿をする
皮膚をゴシゴシこすらない

スキンケアはお肌のバリア機能を整え、刺激に負けない皮膚に近づけます。入浴によってお肌を清潔に保ち、しっかりと保湿するようにしましょう。アトピー性皮膚炎は薬による治療も大切ですが、日頃のスキンケアも大変重要です。

日常生活で気をつけたい5つのポイント

アトピー性皮膚炎には日常生活のあらゆる要因が関係しています。特に下記の5つのポイントを避けることでお肌への刺激を減らすことができます。

アレルギー物質(ダニ・花粉・カビなど)を避ける
お肌への刺激物(衣類の摩擦・肌に合わないスキンケア・洗剤など)を避ける
お肌を清潔に保つ
規則正しい生活をする
ストレスを発散する

注意事項

  • 皮膚を清潔に保つ

  • 薬は手を洗った清潔な指先で塗る

  • 薬の量や塗る回数を守る

  • 汗をかいたら肌着をかえる

  • 部屋が乾燥しないように気を付ける

  • 入浴後はすぐに保湿をする

よくある質問

現時点ではアトピー性皮膚炎を完全に治すことは難しいですが、適切な治療によって症状をコントロールすることは可能です。症状や重症度には個人差があるため、一人ひとりに合った治療薬を使うことが大切になります。
ステロイド外用薬の副作用は、主にニキビ・赤ら顔・多毛・皮膚萎縮・酒さなどです。これらの副作用はステロイド外用薬の強さに比例して起こりやすくなります。必要以上に強いステロイドを使用せず、症状にあったものを使うことが重要です。
赤ちゃんによくあるのが乳児湿疹ですが、アトピー性皮膚炎と同じように赤い湿疹が生じます。乳児湿疹は生後半年ごろまで続くことが多く期間限定の症状ですが、アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続くのが特徴です。また、アトピー性皮膚炎のほうがかゆみが強いという特徴もあります。
アトピー性皮膚炎は市販薬を使用することもできますが、症状に合わせた治療が必要になるため、自己判断での市販薬の使用はおすすめできません。皮膚科で専門医に相談するようにしましょう。
両親のどちらかがアトピー性皮膚炎の場合、子どもに体質が遺伝する可能性は高いです。ただし、親がアトピー性皮膚炎だからといって、必ずしも子どもに遺伝するわけではありません。
アトピー性皮膚炎は感染症ではないため、人から人にうつることはありません。ただし、アトピー性皮膚炎の方はお肌のバリア機能が低下しており、そこから細菌が入ることで「とびひ」が起こりやすくなります。とびひの原因である黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌は他人にうつることがあるため、とびひになった場合は早めに対処するようにしましょう。
現時点ではアトピー性皮膚炎を完治させる方法はありません。適切な治療を受けることで症状をコントロールし、良い状態を維持することを目指します。
アトピー性皮膚炎は大人になってから発症するケースもあります。ストレスや環境の変化、妊娠、出産など、さまざまな要因によって発症します。